インドは高い成長力を持続している注目の新興国です。
当ブログでも政治、経済、為替と株式市場、そして様々な投資信託について力を入れて分析しています。
インドの投資信託の共通点として概ね販売手数料が3.3%程度、毎年発生する信託報酬が2.0%程度と高水準であることが挙げられます。
アクティブ型投資信託の中でも非常に高い手数料形態となっているのが欠陥です。
そんな中今回紹介するiTrustインド株式は手数料が低くなっています。
一見驚異的な手数料の低さに見えます。
しかし、見かけに騙されてはいけません。
その点もしっかり解説していきますのでぜひご覧ください。
Contents
iTrustインド株式はどんなインド投資信託なのか?
iTrustインド株式はピクテ投信投資顧問株式会社によって運用されているインドの投資信託です。
市場平均に対してプラスのリターンを追求するアクティブ型の投資信託です。
「ピクテ投信」という名前を初めて聞いた方も多いと思います。
しかし、1800年台初頭から事業を行っており、欧米では非常に有名な投信組成・運用会社なのです。
運用方針は「中長期にわたって成長が期待できるインド企業に投資を行うこと」です。
ここでいうインド企業とはインドに本拠地を置く、または主たる事業をインド国内でおこなっている企業を指します。
iTrustインド株式の手数料の安さのカラクリ~見かけに騙されるな~
冒頭でも申し上げた通り、一般的なインドの投資信託は販売手数料3.3%、信託手数料2%と高い水準です。
これはアクティブ型投資信託の中でも最も高い手数料水準となっています。
インドに限らず新興国の投資信託は概ね販売手数料、信託手数料が高くなっています。
- 新興国投資信託のメリット・デメリットとおすすめの投資手法を紹介
理由としては、
- 株式を購入する場合と購入した時に売却する際に発生する為替手数料(※)がかかる
- 投資信託に投資するファンド・オブ・ファンズなどである場合、二重で手数料がかかる
- そもそも新興国株を現地で購入する際に手数料がかかる
などが挙げられます。
(※)例えばFXで現在ドル円が110円だった場合、購入価格は110.03円、売却価格は109.97円と0.05%程度の為替手数料です。
新興国投資信託の手数料が全般的に高い中にあって、iTrustインド株式はノーロード投資信託です。
ノーロードとはNo Load、つまり「積み上げ無し」という名前の通り、販売手数料が掛かりません。
通常のインド投資信託が3.3%であることを考えると、販売手数料だけで3%分安いことになります。
更に通常のインド投資信託が毎年信託手数料が約2%なのに対して、iTrustインド株式は0.8998%(税込)と半額以下に抑えています。
ここまで見れば、確かに販売手数料が発生せず、信託報酬も他のインド投資信託の半分でお得だと考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、これだけで分析をやめてしまってはいけません。
ここからiTrustインド株式のからくりを解明していきます。
上記交付目論見書をよくご覧ください。
「実質的な負担 最大1.4998%」という記載にお気付きになりましたでしょうか。
これはファンド・オブ・ファンズ形式の最大の罠でもあります。
iTrustインド株式は以下のようなスキームを用いてファンドを運用しています。
指定投資信託の詳細は以下の通りです。
つまりピクテが運用しているピクテ・インディアン・エクイティーズを主な投資先としています。
また、余った資金を遊ばせるのももったいないのでショートターム・マネー・マーケットJPYに投資しています。
そして、このピクテ・インディアン・エクイティーズの信託報酬は0.6%です。
iTrustインド株式のリターンには同信託手数料が差し引かれた後の結果が反映されるのです。
つまり実質的な信託報酬は以下の通りです。
iTrustインド株ファンド0.8998%
+
ピクテ・インディアン・エクイティーズ0.6%
=
合計1.4998%
あれ、ちょっと待てよ?
ピクテの投資信託iTrustインド株式がさらにピクテのファンドであるピクテ・インディアン・エクイティーズに投資し、両方ともから手数料を取るって手数料の二重取りじゃないか?
と勘の良い方なら気付かれたかもしれません。
そうです。見かけ上は低い手数料に見せかけて、ピクテ全体としてはしっかり1.5%の手数料を取っているのです。
騙されているようでいい気はしませんね。
実質的な手数料を考えると、決して著しく安い信託報酬というわけではないことが分かりました。
iTrustインド株式の運用成績
しかし、手数料の高さは本質的な話ではありません。
例え手数料が10%であったとしても利回りが30%あれば文句はありませんよね。
また、手数料が1%でも利回りがマイナスだったら不満ですよね。
肝心のiTrustインド株式の成績なのですが、2018年4月3日に運用開始されました。
従い、4年ほどのトラックレコードしかありませんが、以下のような成績となっています。
指数であるMSCIインド10/40に対してアンダーパフォームし続けています。
さらに直近乖離が大きくなってきており不安ですね。
指数より高い成績を狙うアクティブ型の投資信託としては不十分な成績と言わざるを得ません。
また、以下の通りMSCIインドや新生UTIインドファンドに劣った成績となっています。
残念ながら投資妙味があるとは言えませんね。
コラム:MSCIインド10/40指数って何??
MSCIの指数は有名ですが、その中のシリーズの一つに10/40指数があります。
通常のMSCIインド指数はインド株式市場の時価総額上位85%の銘柄の時価総額加重平均指数です。
MSCIインド10/40指数は以下の通りある銘柄に偏らないように設定された指数です。
- 1銘柄の構成比率が10%を超えない
- 構成比率5%を超える銘柄の合計が40%を超えない
新興国市場は巨大な企業が複数存在しているので、大型銘柄の影響率をさげるために10/40シリーズが組成されているのです。
iTrustインド株式のまとめ
手数料が安いことで評判のiTrustインド株式についてこれまで分析してきました。
確かにアクティブ型投資信託にもかかわらず販売手数料が0%というのは魅力的です。
また信託報酬も見た目上は0.8998%(税込)と非常に低い水準です。
しかし、これまで見てきた通りiTrustインド株式が投資している投資信託の手数料まで加味すると実質的に信託報酬は1.4998%です。
これは特段安いとは言えない水準です。
さらに、最も肝心の成績は運用年数が短くまだ十分なデータがあるとは言えませんが、MSCIインド10/40株価指数をアンダーパフォームしています。
また、同じインド投信である新生・UTIインドファンドもアンダーパフォームしており、投資妙味があるとは言えません。
私がおすすめする投資先についてはランキング記事で書いていますので興味がある方は是非ご覧ください。