「日本は財政破綻の可能性がある」
本屋でこのようなタイトルの書籍を見たことはありませんか?
私自身、資産運用はもっぱら新興国の株式投資を行っていますが、その理由は大きな利益を見込めるからだけではありません。、
現在の日本の財政状況に非常に強い危機感を抱いていることも理由の1つです。
大げさでしょうか?
しかし、資産運用をするにあたり政府の財務諸表や政策方針を長期にわたって観察していると、
近い将来日本円の価値が大きく下落する可能性が高いと考えざるを得ないのです。
そのため、外貨を保有して「通貨分散」を行いたいと思い、新興国株投資を行っているのです。
通貨分散を行いながらリターンを追求するポートフォリオについては以下で解説しております。
- 【2021年版】おすすめ投資ポートフォリオを紹介!米国ETFと新興国投資で攻守を考慮して組成しよう。
今回は、日本の財政破綻からくる日本円の崩壊がどのようにシナリオで起こり得るのか、
そして、財政破綻懸念がいよいよ近づいてきた時に、何が起こり得るのか?
という点について、分かりやすく解説していきたいと思います。
Contents
日本政府の現在の財政状況を見てみよう〜フロー編・国の借金で破産可能性〜
まずは日本政府の財政の危機的な状況を、フローの観点から確認します。
フロー?といきなり言われても分からないという方のために簡単に説明します。
フローというのは企業でいう「純利益」です。
とても簡単に言うと国の最終的な儲け額です(手取りですね)。
つまり、フローを見るというのは毎年の「日本政府の収支」がどのようになっているかを見るということですね。
まずは財務省が現在の日本の財政状況について身近なわたしたちの家計になぞらえて説明する以下の図をご覧ください。
一番下の「毎月17万円の新しい借金をしている状況です」に注目してください。
通常の家計だともはや自己破産、企業であれば倒産しているレベルです。
収入が支出を上回っていればローンを返すことができます。
しかし日本の現在の状況ではさらに借金の元本が積み重なってしまいます。
その結果、借金の利息がどんどんと重くなるという負の連鎖状態です。
消費者金融でお金を借りすぎた人のような状況なのです。
以下の図は日本政府の支出と収入の差です。
青い線が「歳入」、赤い線が「歳出」です。
直近はアベノミクスも効果もあり歳入は増加傾向ではありますが、依然として毎年40~50兆円の大きな差が歳出との間に存在しております。
さらに、2020年はコロナ対策で大幅な歳出がありました。
加えて、今後超高齢化社会の到来により社会保障費は増大していくことが想定されるので、歳出の増加は確実です。
国としては税収を早急に増やしていかないと非常にまずい状況です。
しかし、残念ながら我が国はほとんど経済成長をしていません。
つまり、税収を増やすことが難しい状況状況となっています。
日本政府の現在の「バランスシート」はどうなっているのだろう
日本政府の毎年の収支(=フロー)が危機的な状況であることが分かった上で、
過去からの累積であるストックがどうなっているのかを見ていきたいと思います。
企業でいうと、先ほど確認したフローがPLでこれから確認するストックがBS(バランスシート)となります。
まずは財務省の資料を確認しましょう。
よくGDP比230%の債務といわれるのは、右側の債務の部分で30年度末で「1,258兆円」となっています。
一方、資産の部つまり左側は674.7兆円となっているので、差し引き「674.7兆円」が「純負債」となります。
企業であればいわゆる債務超過、それも「重度」の債務超過で一瞬で倒産している水準です。
さらにこれは2020年のコロナでの大量の財政支出前ですので恐ろしいですよね。
すでにGDPよりも多い純債務を抱えているということの深刻さが見えてきますよ。
さらに左側の社会保障基金は取り崩すことはできません。
加えて、政府資産の半分近くは「米国債」が占めていますが、米国との関係を考えると大量に売却することが不可能なため、実質的に取り崩すことができません。
フロー(収支)・ストック(累積)の両方の観点から
日本政府は普通の家計や企業であればとっくに破産・倒産しているレベルであることが確認できました。
日本政府はいつ財政破産するのか?〜臨界点を迎える日は?〜
では、普通の企業であれば倒産してしまう水準であるにもかかわらず、なぜ日本では財政危機が発生していないのでしょうか。
それは「日本国内全体」でみた場合には「資産超過」となっているためです。
現状、日本政府の「負債」(金融負債)は以下の日銀データのように増加の一途を辿っています。
さらに今後毎年40兆円以上のペースで拡大していくことが見込まれています。
一方、日本の「家計の金融資産」は以下のように現在約1,900兆円と政府債務約1,400兆円を上回っています。
ただ増加ペースは政府債務の伸びの方が早くなっています。
また、この10年間の家計資産の伸びは株式等がアベノミクスによって堅調に推移したことが要因ですので他の部分についてはほとんど増加していません。
当然会社員の給料はほぼ変わらず、税金だけが重くなっています(まさに消費税増税などですね)。
そして、家計は年々苦しくなっており、資産を蓄える余裕がなくなってきているのです。
いずれ来るであろう次の日本不況期に株価が大きく下落したら、さらに政府債務との差は縮まるでしょう。
拡大する財政赤字(現在40兆円ですが今後増加)、あまり増える見込みがない家計資産を勘案すると、
あと15~20年後には家計資産と政府債務を合わせても債務超過となり、臨界点を迎えることが想定されます。
財政破綻懸念が現実化した際に起こり得ること〜インフレを通じて家計の資産が奪われる、国債売りによる借金も?〜
私が海外で勤務していた時に、外国人からよく聞かれたことが、
「日本の財政はいつ破綻するんだ?」ということでした。
実際日本の財政はもう後戻りできない地点(Point of no return)まで来ており、
ハゲタカともいえる外国人は日本売りにより莫大な利益を得る機会を伺っているなと感じました。
現在政府の債務は約90%を国民の家計資産によって賄われておりますが、
家計資産で賄いきれなくなってきた場合、日本は外国人の資金に頼らざるを得なくなります。
以下は現在の国債等の保有比率ですが「海外」以外は国民の預金等が原資となっています。
外国人の保有比率が増加してくると、いずれタイミングを見計らって外国人が日本国債売りを仕掛けてきます。
急激に日本国債が売られると、まず国債の金利が上昇して利払費が増加します。
現在は日本銀行の政策もあり、10年国債でも利率0%近傍と非常に低い金利で抑えられているため、年間の利払費が8.5兆円で抑えられています。
しかし、国債の金利が新興国のように4%や5%になってきたら、利払費だけで税収の50兆円を優に超える水準になってしまいます。
借金の利息すら賄えないとなってきたら、もうこれは政府の信用は失墜しますよね。
こうなってくると政府の信用によって価値を持っている日本円の価値が暴落します。
さらに日本国債を売却した外国人の日本円⇒外国通貨への変換需要により、円安が進行する中、
投機筋の日本円売りが発生し、大幅な円安になっていきます。
通貨安の怖さはトルコリラを見ればお分かりですよね。
日本円の通貨としての価値が無くなると日本国内ではインフレが発生し、
現在の円建て資産の実質的な価値は何分の1にもなってしまうのです。
一方、インフレの発生によって得をする機関があります。
それは借金をしまくっている政府です。
政府は自身が保有している借金が円建てであるため、インフレによって借金の価値自体が減少するのです。
正直現在の歳入と歳出の差を考えると日本の自力での財政再建は考えられず、
自然な成り行きに身をまかせ国民を犠牲にしてインフレで最後はケリをつけようと考えているとしか思えません。
インフレまでのもう一つのシナリオ:日本政府によるヘリコプターマネー
日本のインフレ発生までのもう一つのシナリオを紹介したいと思います。
これまでに、政府債務が家計資産を勘案しても債務超過になることから発生する財政破綻のケースを説明しました。
実はもう一つ強烈なインフレが発生する可能性があります。
それが、日銀によるヘリコプターマネーです。
日銀の金融緩和の限界から考えて、近いうちにヘリコプターマネーによるインフレが発生しうる可能性があります。
ヘリコプターマネーからのインフレの可能性については詳しく記載していますのでご参考に。
- 日本銀行の金融政策からハイパーインフレの可能性を解説。破綻へ向かう金融緩和。
日本の財政破綻までのシナリオのまとめ
これまで見てきた通り、日本の財政は自力では立ち直れないレベルにまで来ております。
毎年40兆円以上の不足が発生し、政府の純負債は約700兆円、総負債ともなると1,300兆円になっています。
現在政府債務は家計資産によって賄われていますが、
増加が見込みにくい家計資産(現在1,800兆円)を、いずれ政府負債が超過すると考えると、財政破綻へのカウントダウンが始まっていますね。
国債を保有する外国人による日本の国債売りから始まる、利払費増加⇒財政破綻⇒日本円暴落⇒インフレ発生というシナリオも十分に考えられます。
その結果、国民が保有している円建て資産の価値は暴落する一方、政府債務の実質価値が減少し政府は財政再建に向かいます。
政府の謀略からご自身の資産を防衛するためにも、日本円以外の資産を保有(=通貨分散)することが今後非常に重要になってきます。