新興国株式投資について私は情報発信を続けていますが、
「シンガポール」についてはもうすでに新興国とはいえないレベルの国といえます。
シンガポールは世界の金融センターとして名を馳せており、アジア隣接国の中継貿易地点として経済発展してきました。
シンガポールの特徴として所得税が非常に安く、
日本や他の国(主に華僑)からの富裕層の移住が多く、優秀な頭脳を世界中から集め、さらに発展を続けています。
そんなシンガポールを、
株式市場、株価推移、為替動向などのファンダメンタルズ分析を今回はしていきたいと思います。
Contents
シンガポールの政治と財政
シンガポールの人口は約560万人、
なんと一人当たりGDPは約57,000ドルを誇ります。
これは日本の一人当たりGDP約40,000ドルを超える、
世界7位の水準です。
シンガポールは独立国家の中での成功例の一つとされているのです。
この成功を、シンガポールはどのような政治体制で築いてきたのでしょうか。
現在の大統領はトニー・タン氏です。
シンガポールは議院内閣制であり、大統領は日本の天皇と似た存在で、実際の統治権も一部しかありません。
与党PAPの書記長が政治的実権を保持している状況です。
リー・シェンロン首相がその書記長ですね。
リー・シェンロン首相はシンガポールの独立以来の発展の基盤を固め、
リー首相の家系は「政府系投資会社」、
日本でいえばJBIC(国際協力銀行)を支配(実質的に)しているとも言われています。
シンガポールを牛耳っている、という少し揶揄した表現の報道が散見されます。
シンガポールの公務員は世界でも給料が最も高く、例えばリー首相の給与は日本円で2億円以上です。
このように公務員の給与が高いことが汚職などを防いでいるという見解もあります。
日本でいえば安倍首相の給与は2-3千万円台となっており、
その他議員は2-3千万円以下です。
汚職で有名なブラジル首相は1千万円台とされており、
政治腐敗が起きるのも無理がない水準のような気がしてしまいます。
その点をシンガポールは腐敗が起きないよう、給与を非常に高くしているということですね。
実際にシンガポールでは政治家の汚職が全く問題にならないのです。
シンガポールの財政にも触れておきます。
シンガポールのヘン・スイキャット財務相は19日、国会で2018年度(18年4月~19年3月)予算案を発表した。
歳出は前年度比8.3%増の800億2,000万Sドル(約6兆4,870億円)、歳入は3.3%減の726億8,000万Sドルとなった。
歳出が拡大する一方で歳入は縮小し、3年ぶりの赤字予算となっている。
シンガポール政府の重点施策に「就学前教育の充実」を打ち出しており、
幼児育成庁(ECDA)に前年比約50%近くの大きな予算が2018年割り当てられているのが特徴です。
次いで歳出比率が高いのが「安全保障・外交分野」となっています。
2018年度予算案は、3年ぶりの赤字であり、▲6億シンガポールドルとなっています。
シンガポール経済の現状、GDP成長率の推移を把握しよう
シンガポールの経済成長率をみていきましょう。
以下はGDP総額と成長率の推移です。
2010年はGDP成長率15%を超える水準にありますが、その後は停滞し3%程度に落ち着いています。
これは中国の経済減速も影響しています。
特筆すべきは、
シンガポールは2011年から一人当たりGDPがすでに57,000USDと日本を超える水準となっていることです。
中所得国の罠にもビクともせず、
政府主導の資本・技術・知識集約型の高付加価値産業への構造シフトを達成しています。
すでにこの一人あたりGDP57,000USDは香港や日本を上回っており、
「アジアトップ」となっています。
2015年は世界金融危機以来の最低水準となりましたが、相対的な経済の成長は継続が見込まれています。
以下のアジアの比較資料を見ると、
シンガポールの一人当たりGDPがずば抜けていることがわかります。
効率的な国の運営がなされていますよね。
シンガポールの人口は今後も増加する?人口推移、人口ピラミッドを考察
経済の動向を予測するに当たって、最も重要なのは「人口」です。
人口が増えなければ内需は拡大せず、消費活動、労働活動が活発化せず、
経済は落ち込んでしまいます。以下はシンガポールの人口推移を見ていきましょう。
シンガポールは人口が600万人に届かない小国ではありますが、
それでも年々人口は増加していっています。
シンガポールといえば富裕層が所得税が安いのを理由に移住を進めていますが、
国の発展にはやはり自国で子供が増え、若い労働力、消費が必要です。
自国の今後の人口の動向はどうなっていくのでしょう。
人口ピラミッドを見ていきます。
人口ピラミッドは非常に歪ですね。
どこかでこの形のピラミッドを見たことがあります。
そう、日本ですよね。
シンガポールは日本と同様に高齢者ボリュームが大きく、経済成長が停滞してしまう未来が予見できます。
経済は安定成長を続ける見込みとされていますが、
高付加価値産業も高止まりする未来が10年以内に必ずくると考えています。
シンガポールGDPを支えているのは?
シンガポールのGDPを支えている産業は何になるのでしょうか。
以下はシンガポールのGDP産業構成です。
特筆すべきは18.4%を占める製造業です。
シンガポールは、
- エレクトロニクス
- 化学
- バイオ医薬
- 輸送機械
- 精密機器
などの主要産業が活発化しています。
バイオ医薬産業は特に力を入れ成長しています。
シンガポールはデジタル化と自動化による産業効率化も進めており、
低コストで製造・製品量産が可能になることで、
人件費が安い他東南アジア諸国の製造業を吸収することも可能性としてはあり、
この点は非常に期待が持てるものとなります。
また、国の規模からして、やはり農林水産業が0%です。
私も何度かシンガポールに出張をしてことがありますが、
農村部は見当たらず、街、街、街でした。
シンガポールはマリーナベイサンズを始めとして、
観光地としても有名ですよね。
GDPの15%を「商業」「飲食」「宿泊」が占めています。
シンガポールは立地的にも貿易国であり、
11%を「運輸」「倉庫」「通信」が占めていますね。
大本命の「金融業」はその他サービスに分類されており、5%前後と意外と少ないのです。
シンガポールの輸出入先・他国に依存性はあるのか?
貿易相手を見る理由としては、
他国にバランスよく取引をしていれば良いのですが、
先に解説したブラジル、ミャンマーなども中国依存が大きく、
中国の経済が傾いたら大打撃を受けることを意味します。
シンガポールはどうなのでしょうか、詳細を見ていきたいと思います。
主な貿易相手国・地域と貿易額 | 輸出 | 輸出総額:4,553億4,500万Sドル[2016年] 国名/貿易額/(シェア) ・中国 591億6,100万Sドル(13.0%) ・香港 574億1,300万Sドル(12.6%) ・マレーシア 483億1,800万Sドル(10.6%) ・インドネシア 355億9,400万Sドル(7.8%) ・アメリカ 296億6,200万Sドル(6.5%) ・日本 201億1,000万Sドル(4.4%) |
---|---|---|
輸入 | 輸入総額:3,907億2,700万Sドル[2016年] 国名/貿易額/(シェア) ・中国 557億9,700万Sドル(14.3%) ・マレーシア 445億2,500万Sドル(11.4%) ・アメリカ 421億6,200万Sドル(10.8%) ・台湾 321億8,400万Sドル(8.2%) ・湾岸協力会議(GCC)諸国 283億8,000万Sドル(7.3%) ・日本 274億2,500万Sドル(7.0%) |
出典:JFTC
立地的にも中国、香港、マレーシアが貿易の主要な相手先となっていますね。
少し中国に依存度があるところが心配ですが、
上記の産業構造で述べた通り、製造業の自動化が進む前提であればそこまで問題になる水準ではないですね。
この記事のまとめ
ここまで新興国株式投資、シンガポール株式投資をするにあたってのファンダメンタル分析をしてきました。
今回の記事を簡単にまとめると、
- シンガポールの人口は約560万人、一人当たりGDPは約57,000ドル。
- シンガポールは日本の一人当たりGDP約40,000ドルを超える世界7位の水準。
- シンガポール政府の重点施策に「就学前教育の充実」を打ち出しており、
- 幼児育成庁(ECDA)に前年比約50%近くの大きな予算が2018年割り当てられているのが特徴。
- 2018年度予算案は、3年ぶりの赤字であり、▲6億シンガポールドルとなっている。
- 中所得国の罠にもビクともせず、政府主導の資本・技術・知識集約型の高付加価値産業への構造シフトを実現。
- シンガポールはエレクトロニクス、化学、バイオ医薬、輸送機械、精密機器と製造業が18%のGDPを占めている。
- 貿易相手も立地的にも中国、香港、マレーシアが貿易の主要な相手先となっており多少中国に依存ありそれはリスク。
となります。
シンガポール株式市場については以下の記事をご覧ください。
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