今までロシアの経済・財政・政治と為替の見通しを分析してきました。
原油ショックで大きな痛手を被りましたが、徐々に原油価格の回復に伴ってドン底期を抜け出してきています。
ただ、既に人口ボーナスは終了し、1人あたりGDPも既存に15000USDを超えており成長力が著しい新興国とはいえません。
今回は今までの分析を踏まえて、いよいよロシアの株式投資が魅力的かどうかという点を分析したと思います。
Contents
ロシアのファンダメンタル(経済・政治・財政)と為替の見通し
まずはおさらいを簡単にしていきましょう。
- 日本の45倍を誇る国土・ロシア。人口減少で株式投資には不適格?国の経済と財政のファンダメンタルズ分析。
- 【RUB】ロシアルーブルは地政学的リスク・原油相場で急落!立ち直りの兆しが見える今後の為替相場の見通しを分析する。
ロシアは政治体制こそプーチン政権のもと盤石ですが、
経済については依然として資源偏重型の経済であり、尚且つ人口も減少に向かっており、
他の新興国のようにどんどんと成長していくというPhaseではなくなってきています。
また財政は依然として赤字でGDP比債務は30%程度と低い水準ではありますが、
外国人保有比率は25%と非常に高くなっています。
また資源価格が下落するようなことになれば、外国人による国債売によって金利が急騰し、
利払費が急拡大して財政をひっ迫する懸念があります。
経済と財政については決して投資対象として魅力的といえる国ではありませんね。
ロシア株の市場平均MOEX指数(MICEX指数)の推移と今後の見通し
ロシア株の市場平均は2017年12末にMOEX指数からMOEX指数(Moscow Exchange)と名称が変更になります。
以下は過去10年のMICEX指数の値動きとなります。
2012年から2015年にかけて原油価格の急落に伴って、原油に過度に依存しているロシア経済は大打撃を受け、海外からも資金が引き上げられ軟調に推移していました。
原油価格が復調基調となり、更に2017年先進国が依然として緩和的な政策をとりました。
結果として高リターンが狙える新興国に流れこんだという経緯もあり立ち直りをみせました。
更に、元々割安水準で評価されていたロシアには勢いよく資金が流入し現在ではMOEX指数は飛翔しています。
現状依然としてPERは5倍、PBR0.8倍(2020年2月)という割安水準になっています。
株価が上昇してもPERが割安水準ということはロシア企業の利益水準も大きく上昇していることを意味します。
今後中央銀行は多少利下げを行い国内景気は復調気味であることを考えると、
短中期的には上昇余地はありそうですが、そもそも経済自体が成長力が高くないので長期投資先には向いていないです。
MOEX指数に投資をする方法
ロシアの指数であるMOEX指数に投資する手法としてETFが挙げられます。
ETFはExchange Traded Fund(上場投資信託)で、株式市場がオープンしている間に、
いつでも取引ができる株式と同じような投資信託と考えて頂ければと思います。
詳しくは、ETFをわかりやすく解説で説明しておりますので、参考にしてみて下さい。
SBI証券で取引可能なETFは以下のようになります。
例えば一番上のETFはMSCI Russia Indexに連動するように設計されています。
MSCI Russia Indexはモスクワ市場に上場されている時価総額上位85%を加重平均した指数なので、
疑似的ではありますがMOEX指数と同等のパフォーマンスをえることができるでしょう。
ロシアの個別株に投資する方法ー直接取引ならSBI、ADRを用いるならば楽天証券ー
ロシアに上場されている銘柄に直接投資を行うのであればSBIが銘柄を取り扱っております。
【参照】SBI証券取扱銘柄
直接取引を行う場合でも片道1.2%、売買往復で2.4%の手数料がかかります。
更に購入時と売却時で適用される為替レートも3%程度の差が生じる為、
合計5%程度の手数料がかかってしまうということは念頭に置かれたほうが良いでしょう。
米ドル建で投資する手法として楽天証券で、
ADR(American Depositary Receipt)日本語では米国預託証券という仕組みを用いる方法があります。
ADRはロシアに上場されている銘柄を米国の銀行が取得し、更に米国の銀行が取得した株を裏付けに
預託証券を米国市場に上場するという仕組みです。
ADRは楽天証券では一回あたり26.25USDの取引き手数料と、
日本株取引の5倍の手数料がかかりますが、直接取引の場合と比べて一見安いように見えます。
しかし、あくまで米国の銀行が発行している証券であり、
本国の証券価格と連動しない恐れがあり、尚且つADRのみ上場が停止となるリスクも抱えております。
更に現在楽天証券で取引できる銘柄はたったの4銘柄という選択肢の少なさも難点です。
ロシア株のおすすめ個別銘柄ーモバイル・テレシステムズー
ロシアといえば、資源会社というイメージが強いと思います。
有名どころでいうとロスネフチやガスプロムといった企業となりますが、
債務比率が大きく原油価格に大きく影響されますので、今回は安定的な利益が狙えて、
尚且つ割安に放置されているモバイル・テレシステムズを取り上げさえていただきます。
以下は同社の事業内容です。
【事業内容】同社は送信、広帯域、有料テレビ及び様々な付加価値サービスを含む各種のモバイル・固定回線音声及びデータ電気通信サービス、並びに設備・付属品の提供を中心に扱う。同社はロシア連邦、ウクライナ、ウズベキスタン、アルメニア及びベラルーシにおける約105百万の顧客向けにサービスを提供している。同社は国内とベラルーシにある複数の支店、並びに子会社4社を通じて事業を展開する。
引用:楽天証券
つまり日本におけるNTTのようなものですね。
売上高、純利益、一株利益(EPS)ともに順調に積み上げていっています。
年度 | 2017/12 | 2018/12 | 2019/12 | 2020/12 | 2021/12 |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 442,911.00 | 480,293.00 | 512,360.22 | 494,926.00 | 517,270.25 |
営業利益 | 96,100.00 | 116,185.00 | 421.89 | 112,893.00 | - |
当期利益 | 56,042.00 | 6,848.00 | 64,631.64 | 61,412 | 65,104 |
EPS(RUB) | 57.37 | 71.99 | 58.34 | 70.41 | 58.21 |
PER(倍) | 10.79 | 9.35 | 12.48 | 8.68 | 10.50 |
配当(RUB) | 67.60 | 45.16 | 37.31 | 17.86 | 54.96 |
理想的な右肩あがりの業績ですね。
しかし、以下のように株価が下落していることもあり予想PERは9倍台と割安な水準となっています。
ただ株価は底値から上昇し始めた初動で今後の飛翔が期待されるところではあります。
また配当利回りは8%台と非常に高いのもおすすめできる点です。
ロシア株式投資のまとめ
ロシア株は経済と財政の不安定さから正直投資先として魅力的ではないですが、
2017年まで売り込まれていたということもあり現在割安な水準となっています。
その為、短期的には適正水準に戻る過程での利益を取れる可能性がありますが、
追加制裁等の地政学リスクの悪化には注意を払う必要があります。
個別銘柄については資源会社は資源価格による変動が激しくも、通信会社である
モバイルテレコムズは売上・利益共に順調にのばしており、現在割安ということもあり、
チャートの形をみて購入する機会を伺うレベルのものも存在しています。
おすすめの新興国株投資手法
今回分析してきたロシアは国としての成長力は低いものの、割安という株式市場でした。
しかし、本当に魅力的な新興国というのは成長力が高く割安な銘柄です。
ロシアは右下ということですが、魅力的なのは右上のカテゴリーに属している新興国株です。
そもそもこのような市場を探すのは難しいですし、更にそこから個別株を厳選するのは更に骨が折れます。
新興国の個別株に投資を行うのであれば、現地に精通したプロに任せるのが私は一番最適な選択肢であると考えています。
その為、私は現在経済成長中にもかかわらず株価が割安に放置されている「中国」に投資を行うオリエント・マネジメントに資金を預けています。
オリエント・マネジメントを通じた新興国株への投資に興味のある方は、以下ご覧ください。