これまでにフィリピンについては、株式投資を行う上で重要となるファンダメンタルズ分析と、通貨であるペソの今後の動向について確認してきました。
今回はいよいよフィリピンの株式市場について、市場全体の見通し、おすすめの個別銘柄、取扱証券会社を説明していきます。
Contents
フィリピンのファンダメンタルズと為替見通しのおさらい
本題に入る前に前回までに分析したフィリピンのファンダメンタルズと為替についてのおさらいをしていきたいと思います。
フィリピンはASEAN諸国の中でも経済成長が著しい国です。
とはいえ、経済レベルは依然として低く、中所得国の罠の水準からも遠いため、人口増加も相まって今後も経済成長の持続が見込まれます。
政治はドゥトルテ大統領のもと安定していますが、財政はインフラ投資に資金が必要であるため、近年は赤字基調が続いています。
政治や財政よりも最も注意しなければならないのは為替です。
フィリピンでは経常収支の悪化が継続しており、ペソも下落基調にあります。
経常収支の赤字は内需拡大に国内生産が追い付かず、輸入が拡大したことによる貿易赤字が影響していました。
しかし、直近は経常赤字は縮小し、金融収支が改善したことで国際収支は黒字に転換しています。
実際2018年後半から現在にかけては、概ね為替レートは安定しており投資環境として良好な状態が続いていると言えるでしょう。
フィリピンの市場平均であるフィリピン総合指数をチャートと指標から分析
では本題のフィリピン株式市場について見ていきます。
まずはフィリピンの株式市場全体を、日本のTOPIXにあたるフィリピン総合指数の動向と指標を基に見ていきましょう。
フィリピンの株式市場には2020年10月時点で273銘柄が上場しており、時価総額合計は2,728億ドルとなっています。
日本の東証一部の時価総額合計が68,600億ドルということを考えるとまだまだ小規模な株式市場であることがわかります。
フィリピン総合指数のここ5年の値動きをみていきましょう。
2015年のチャイナショック以降小幅に上下動を繰り返していましたが、2020年の新型コロナウイルスによる影響で大きく下落し、現在もコロナ前の水準を回復できていません。
一方、フィリピン株全体のPERは29.1倍、PBRは1.8倍とかなり割高水準となっています。
フィリピン経済は多少の上下動はあるものの平均7%程度の成長率を誇っています。
つまり、経済や企業収益が不調というよりは、2010年代初頭に過剰な値上がりをした株式市場が現在調整をしていると捉えたほうがよいでしょう。
時が来れば、経済と企業収益の拡大に伴って再び株価が上昇することは間違いないでしょう。
フィリピンの市場全体(インデックス)に投資を行う方法〜ETFという選択肢〜
フィリピンの市場全体に投資を行って市場平均程度のリターンを狙うのであれば、ETF(Exchange Traded Fund)が現実的な選択肢になります。
ETF、つまり上場投資信託は、株式市場が取引可能な時間に通常の株式と同様に売買することが出来る特殊な投資信託です。
- ETFは儲かるのか?仕組みとメリット・デメリットをわかりやすく解説
フィリピンETFは楽天証券やSBI証券といったネット証券を通して取引することができます。
現在楽天証券やSBI証券で取引できるフィリピンのETFはiシェアーズMSCIフィリピンETFです。
同ETFが連動を目指しているMSCIフィリピン指数は、フィリピンの株式市場の時価総額上位99%を占めている銘柄の時価総額加重平均指数です。
つまり、ほぼフィリピン総合指数と同様の動きをするように設計されております。
フィリピン個別株の買い方~SBI証券も楽天証券も取り扱いなし?!~
新興国の中には日本の証券会社でも取り扱っている個別銘柄があるか、なかったとしてもADRという仕組みを用いて購入することができる仕組みが整っている国もあります。
ADRはAmerican Depositary Receiptの略で米国の銀行がフィリピン上場の銘柄を購入し、その銘柄を担保にして米国市場に元の株と連動する預託証券を発行し、上場された預託証券を日本の証券会社経由で購入するという仕組みです。
フィリピンADRで唯一取扱があるのはフィリピン最大の通信事業者である「PLDT」のみです。
他に個別銘柄を購入したい場合、日本にいながら取引を行うには唯一アイザワ証券を通して購入する必要があります。
しかし、取引にあたっては現地で掛かる諸費用と国内委託手数料によって、以下の通り売買ごとに高い手数料が発生します。
さらに株式購入時と売却時に適用される為替レートは異なるため、最悪の場合7~8%の手数料がかかってしまいます。
高い手数料を避けるためには、現地に行き現地の証券会社で口座を開設する必要があります。
とはいえ、コロナ禍で現地に赴くのは非常に難しく、言語の壁もあるなど障壁は相当高く、そこまでしてフィリピン株を取引するのは現実的ではありません。
10%以上の利益が見込めるのであればアイザワ証券経由で投資をし、そうでなければ投資は控えるのが賢明でしょう。
フィリピン株のおすすめ銘柄〜アヤラ・ランド〜
では仮にフィリピンの個別銘柄に投資をするという場合におすすめの銘柄をご紹介します。
今回私がおすすめするのはフィリピン最大のディベロッパーである「アヤラ・ランド」です。
日本で言うと、高度経済成長期初期の三菱地所に投資を行うようなものです。
フィリピンは財閥系の影響力が強く、GDP比で7~8割を財閥系が占めています。
その中でも有力財閥であるアヤラ財閥の中核企業の一つが今回ご紹介する「アヤラ・ランド」です。
これまでにご紹介した通り、フィリピンでは人口が増え続けており、この傾向は今後もしばらく続く見込みです。
人口が増えると不動産の需要は増え、当然不動産価格は上昇します。
また人口が増えると経済成長に伴い収入が増え、それも不動産価格を押し上げます。
つまり、不動産事業を営むアヤラ・ランドの利益は拡大し続けることが見込まれます。
また、同社はホテル・リゾート事業も行っているので観光客需要も取り込むことができるのです。
実際2020年はコロナの影響で落ち込みましたが、2019年までは同社の売上および利益は右肩上がりで、ROEも15%近辺を安定してマークし続けていました。
Revenue | 117,700.49 | 138,507.78 | 162,996.89 | 165,739.55 | 94,568.23 |
---|---|---|---|---|---|
Gross Profit | 45,455.87 | 57,184.93 | 71,043.85 | 76,149.57 | 40,033.53 |
Operating Income | 33,709.46 | 44,364.35 | 53,086.87 | 61,133.20 | 26,817.73 |
Net Income | 20,908.01 | 25,304.97 | 29,240.88 | 33,188.40 | 8,727.16 |
コロナの影響から徐々に回復していくことが想定されるため、今後要注目の企業と言えるでしょう。
ちなみに現在の株価水準はPER50倍とかなり高い水準となっていますので、今後調整が見込まれ、現在投資するのは控えた方が良いでしょう。
フィリピン株式市場のまとめ
フィリピン株は2010年代前半に高騰したことによって割高となり、成長力は抜群であるにも関わらず現在は調整の局面を迎えています。
市場平均に投資を行うのであればETFがおすすめです。
個別銘柄取引は手数料が非常に高いアイザワ証券しか取り扱いがなく、最初から大きなハンデを背負っていると言わざるを得ない環境となっているためおすすめできません。
どうしても個別銘柄投資をしたい場合は、やはり財閥系の企業が魅力的です。
人口増加とそれに伴う経済成長を考えると、フィリピン最大の不動産会社であるアラヤ・ランドなどがおすすめできる個別銘柄です。
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