「タイ」といえばバンコク、歓楽街が広がり物価も安く、
バックパッカーの聖地としても有名ですよね。
日本国内でもタイカレー、タイ式マッサージとタイはとても日本人には身近なのではないでしょうか。
タイは今後も経済成長が見込まれると言われておりますが、
株式投資で大きなリターンを得るにもまだ間に合うのでしょうか?
タイ不動産も加熱を見せましたが、すでに不動産価格は高止まりしています。
今回はタイ株式投資を実行するにあたり、
まず手をつけるべきファンダメンタル分析をしていきたいと思います。
Contents
タイの政治と財政
タイの政治と財政の概要を把握していきましょう。
政治面からですが、タイの前首相であるタクシン氏が汚職など不祥事により2006年に退陣、
これをきっかけに軍部がクーデターを起こした歴史があります。
「タクシン派VS反タクシン派」の構造となり、
議会は政権交代が短期間で繰り返され、国民の不安は高まっていました。
この安定しない政治が尾を引いた結果、タイの経済政策も定まらず、
経済成長が鈍化、厳しい局面を迎えています。
国の政治が安定しなければ他国からの投資は活発化しないのです。
タイの金融政策については、
2000年以降「インフレ・ターゲティング」を基本としています。
中央銀行が物価上昇率(インフレ率)に対して一定の目標を設けて金融政策を行うことで、インフレ率の見通しの公表し、目標達成のための政策対応、目標に対する説明責任により、市場の予想インフレ率の安定や、中央銀行の独立性と説明責任の強化が期待でき、金融政策の透明性向上というメリットがある。
(引用:インフレ・ターゲティング)
リーマンショック後のタイの政策の特徴として、
タイ中銀は政策金利を5ヶ月で3.75%→1.25%まで大幅に引き下げるなど、タイ経済の回復を確実なものとした実績もあります。
2011年11月には、タイは大洪水に見舞われ、景気悪化しました。
その後多少は回復しました。
しかし、2015年3月になると、国内景気回復が遅れていることに加えて、
ヘッドラインCPI上昇率(すべてを含む一般の消費者物価指数)が下落しました。
原油価格下落の影響でマイナスとなったことで利下げの余地が広がったことしもあり、
物価上昇圧力も弱いと判断し、政策金利を1.5%で据え置いています。
タイの財政の特徴として、
景気対策による「歳出増加」で赤字が拡大しその後すぐに景気は回復することがパターン化されています。
そこには上手な「税収増加」で赤字を解消する堅実な運営がなされており安心感があります。
タイの財政収支はアジア通貨危機(1997年)時に税収が激減、財政収支は当然大幅赤字でした。
2001年のドットコムバブル崩壊後もさらに不況に陥りましたが、
上記で紹介したタクシン首相を主導とした、タクシン政権が健全な財政運営を進めました。
一時的に赤字は拡大したものの、2003年以降は景気回復、税収増加で財政収支を黒字化しました。
その後リーマンショック、大洪水、軍のクーデターなど政治が混乱しておりその際も財政赤字は続きましたが、
2015年以降は財政収支を改善しています。
タイ経済の現状、GDP成長率の推移を把握しよう
タイの経済成長率を見ていきましょう。
以下はGDP総額と成長率の推移です。
タイのGDP成長率は2015年頃から3%程で落ち着いてしまっていますね。
2012年は7%も成長を達成していましたが、下火傾向にあります。
過去からの推移をみても、リーマンショックの煽りを受けた2008年。
中国の経済減速の越境が2011年に出た後も非常にボラティリティが高かったのですが、
2018年以降はIMFの予測でも3%程度の成長率に据え置かれています。
一人当たりGDPはすでに6,000ドルと一人当たりGDO10,000USDの「中所得国の罠」も見えてきています。
「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することを指す。
(引用:内閣府)
中所得国の罠である10,000USD当たりになれば、
現在のタイの経済成長の中心となっている製造業の労働集約型から技術集約型への転換が必要となります。
労働シフトも含め、タイは今後も経済成長をしていく余地はあるのでしょうか。
そのポテンシャルを次は人口から探っていきたいと思います。
タイの人口は今後も増加する?人口推移、人口ピラミッドを考察
経済の動向を予測するに当たって、最も重要なのは「人口」です。
人口が増えなければ内需は拡大せず、消費活動、労働活動が活発化せず、
経済は落ち込んでしまいます。
現在の日本がそうですよね。
さて、本題のタイの人口推移を見ていきましょう。
タイの人口は約7千万人程度と規模感はそこそこですね。
しかし、2014年頃から増加しておらず、IMFの予測でもしばらくは同じ水準で推移する予測が立てられています。
このまま人口は増加しないのでしょうか?
タイの人口ピラミッドをみていきましょう。
タイの人口ピラミッドはやはり若年層に向かって先細っていますね。
わかりやすく高齢化が進んでおり、
他の記事でも紹介したマレーシアやフィリピンなどが上昇基調の中、ASEANの中でもタイだけが下降基調なのです。
タイで株式投資をするにも、あまりにも人口と経済成長率がネガティブなので、
すでに二の足を踏んでしまいそうですね。
唯一ポジティなタイの経済内容としては、
「農村の余剰人口(現状30%程度)」→「都市の労働人口」への転換が終わっておらず、
まだまだ移動が続いているところ、つまり「ルイスの転換点」をまだ迎えていない点です。
ルイスの転換点:
1979年ノーベル経済学賞の受賞者であるイギリスの経済学者アーサー・ルイスによって提唱された開発経済学における人口流動モデルの概念で、工業化の過程で農業部門から工業部門への労働力の移行が進み、農業部門の余剰労働力が底をついた段階のこと。ルイスの転換点以降は、農業部門からの労働力の流入が無くなり、雇用需給が締まり、労働力の不足状態となるため、賃金率の上昇が起き、経済成長のプロセスにおける重要な転換点となる。
(引用:ルイスの転換点)
タイのGDPを支えているのは?
タイのGDPを支えているのはどの産業なのでしょうか?
投資先の国のGDPを読み解くことは非常に重要です。
以下はタイの産業構造構成比となります。
バランスが取れた産業構成比ですね。
タイはまだまだ農林水産業に従事する人々の割合が大きく、
依然として就業者の30%以上がGDP構成比の8%しか占めていない農林漁業に属しているのです。
ここから製造業へのシフトが今も続いているということです。
農林水産業から製造業への人口移動、製造業による労働集約型から技術集約型への転換と、
タイは今からの五年で大きな節目を迎える局面とも言えるでしょう。
タイの輸出入先・他国に依存性はあるのか?
貿易相手がどこか一国に依存してしまっていると、
その国の経済減速が進めばそのぶん煽りを受け、タイ経済の低迷にも拍車がかかってしまいます。
まずは、輸出産品をみてみましょう。
主要貿易品目
(1)輸出 コンピューター・同部品,自動車・同部品,機械器具,農作物,食料加工品
(2)輸入 機械器具,原油,電子部品
(引用:外務省)
やはり製造業がメインなので、機械など製品を組み立てるために原料を輸入しています。
その後他国に輸出することで経済を回しているということがよくわかります。さすが「世界の工場」ですね。
では、肝心のタイの貿易相手はどうなっているのでしょうか?
やはり中国に地理的にも依存しているのでしょうか?
主な貿易相手国・地域と貿易額 | 輸出 | 輸出総額:2,153億8,800万ドル[2016年] 国名/貿易額/(シェア) ・アメリカ 245億ドル(11.4%) ・中国 238億ドル(11.0%) ・日本 204億8,100万ドル(9.5%) ・香港 114億7,200万ドル(5.3%) ・オーストラリア 103億900万ドル(4.8%) |
---|---|---|
輸入 | 輸入総額:1,941億9,800万ドル[2016年] 国名/貿易額/(シェア) ・中国 420億3,000万ドル(21.6%) ・日本 306億7,300万ドル(15.8%) ・アメリカ 120億4,100万ドル(6.2%) ・マレーシア 107億9,100万ドル(5.6%) ・韓国 72億8,300万ドル(3.8%) |
(引用:JTFC)
輸出はアメリカ、中国、日本の順番ですね。
こちらはとてもバランスが取れていますよね。
輸入先は中国が20%と大きなシェアを占めますが、
基本的には資源の確保がメインとなり、「売り先」として大きな割合を占める訳ではないので、
問題ないでしょう。
この記事のまとめ
ここまでタイ株式投資をするに当たって必要となるファンダメンタルズ分析を実施してきました。
タイの株式投資を行う上では、上記の事項を前提として投資判断をおこなっていきましょう。
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