「イラン」といえば何が思いつくでしょうか。
サダムフセインが政治家を務める「イラク」と国の名前が似ているので間違えそうですね。
私はイランに対して名物食の「ナン」しか思いつきませんでした。
しかし、投資の観点でいえばイランは大きなリターンの可能性がある市場なのです。
今回はその点をまずはファンダメンタルな部分から解説していきたいと思います。
Contents
イランってどんな国?概要を把握
そもそもイランとはどこにあるのでしょうか?
アジアに住む我々日本人からしたら投資検討する前にどこにあるかも詳しくはわからないのではないでしょうか。
地図で日本からイランを線で繋げてみました。
日本から見ると、中国を超え、アフガニスタンを超え、ようやくイランに辿り着きますね。
新興国のアジア諸国と比べると非常に遠いですよね。
以下は外務省が出しているイランの基礎データです。
1 面積 | 1,648,195平方キロメートル(日本の約4.4倍) |
2 人口 | 8,000万人(2016年,世界人口白書2016) |
3 首都 | テヘラン |
4 民族 | ペルシャ人(他にアゼリ系トルコ人,クルド人,アラブ人等) |
5 言語 | ペルシャ語,トルコ語,クルド語等 |
6 宗教 | イスラム教(主にシーア派),他にキリスト教,ユダヤ教,ゾロアスター教等 |
7 略史 | アケネス朝ペルシャ(紀元前5世紀),ササン朝ペルシャ(紀元3世紀)時代には大版図を築く。その後,アラブ,モンゴル,トルコ等の異民族支配を受けつつもペルシャ人としてのアイデンティティーを保持し,1925年にパフラヴィ(パーレビ)朝が成立。1979年,ホメイニ師の指導のもと成就したイスラム革命により現体制となる。イラン・イラク紛争(1980年~1988年)及びホメイニ師逝去(1989年6月)後,1989年にハメネイ大統領が最高指導者に選出され,ラフサンジャニ政権(2期8年),ハタミ政権(2期8年),アフマディネジャード政権(2期8年)を経て,2013年8月,ローハニ政権が発足し,2017年8月,同政権の2期目が開始。 |
(引用:外務省)
人口は8000万人と、想像以上に多いと感じたのではないでしょうか。
そして見た目の通り、国土が日本の4.4倍もあります。
政治体制はイスラム共和制、最高指導者はセイエド・アリー・ハメネイ師となります。
以下はイランの経済概要です。
1 主要産業 | 石油関連産業 |
2 GDP(名目) | 3,768億ドル(2016年,IMF推計) |
3 一人当たりGDP(名目) | 4,683ドル(2016年,IMF推計) |
4 GDP成長率(実質) | 6.54%(2016年,IMF推計) |
5 物価上昇率 | 8.57%(2016年,IMF推計) |
6 失業率 | 12.45%(2016年,IMF推計) |
主要産業はやはり石油です。
一人当たりGDPも4,683USDと中所得国の罠である10,000USDにはほど遠く、
まだまだ成長が見込まれる市場といえる新興国ですね。
イランに関しては、「制裁」の話抜きには分析はできません。
多数の国と企業がイランに対する制裁を実行した理由はイラン国内における、
- 深刻な人権侵害
- 核開発問題
の2点です。
制裁内容としては、
- 核兵器、ミサイル、特別な軍事技術などの軍事関連の輸出の禁止
- 石油、天然ガス、石油化学製品への投資の禁止
- イランの金融機関の国際取引からの締め出し
イランに対する制裁には長い歴史があり、
1979年のイラン・イスラム革命があって以降、アメリカはイランに対する制裁措置を継続しています。
問題は「イランの核開発問題」であり、アメリカをはじめ、世界各国、多国籍企業が制裁に協力をしている状況です。
この制裁が石油産業や自動車産業などに大きな影響を与えることになったのですが、
ここは概要にとどめ、詳しくは後ほど解説します。
イラン経済の現状、GDP成長率の推移を把握しよう
イランの経済成長率を見ていきましょう。
2016年のイランのGDP成長率を見ていただけるとわかりますが非常に高いですよね。
2016年は12.5%、なんとこれはこの年の世界1位となるGDP成長率でした。
なぜこのような高い経済成長率をイランは誇っているのでしょう?
それには人口が大きく関わっているのです。
イランの経済成長を押し上げている人口ボーナス
イランの経済成長率が高いのはひとえに「人口ボーナス」の影響です。
【人口ボーナス】
生産年齢人口(15〜64歳)に対する従属人口(14歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)の比率が低下し、経済成長を促すこと。
人口ボーナス期では豊富な労働力を背景に個人消費が活発になる一方、高齢者が少なく社会保障費用が抑えられるため、経済が拡大しやすい。
逆に従属人口の比率が相対的に上昇することを人口オーナスという。
(引用:野村証券)
それではイランの人口ピラミッドを具体的に見ていきましょう。
経済成長をするにあたり、非常に魅力的な形をしています。
ここまで綺麗な形のピラミッドは非常に珍しいです。
長期に亘って生産人口が供給され、消費も継続して活発になっていくことが見込まれます。
この人口の形が経済成長を押し上げているということです。
ちなみにイランの過去から未来の人口の推移も見ていきましょう。
やはり順調に推移していますね。
右肩上がりです。
イランのGDPを支えているのは?
上記のイランの概要でも述べた通り、主要産業はもちろん石油ですよね。
2016年末時点のイランの原油埋蔵量は全世界の約9%を占めます。
これは以下の通りベネスエラ、サウジアラビア、カナダに次ぐ4位となります。
ちなみに天然ガスの埋蔵量はロシアに次ぐ2位です。(2015年までは1位)
現在の課題としては、イランの原油掘削設備などが老朽化しており、
さらなる生産量確保には外資オイルメジャーの誘致が必須になってきています。
しかし、イランは経済制裁が解除されたばかりであり、
国の立て直し時期となりますので少し時間が掛かりそうですね。
石油関連がイランの主要な歳入となっている産業と思われがちですが、
意外とイランのGDPには貢献していないのです。
イラン政府の歳入は石油に依存せず、他中東とは異なりイランは他産業で実は支えられているのです。
以下はイランのGDP別産業内訳となりますが、工業の比率が非常に高いです。
これは自動車産業が活発であることを示しています。
農業:9.8%、工業:35.9%、サービス:54.3%(17年推定)
(引用:海外投融資情報財団)
直近の自動車産業の動向としては、2012年の国際的な制裁措置にて衰退に直面しましたが、
2014年から持ち直しています。
石油産業の割合いが高くなかった理由は2008年から実施されていた経済制裁です。
しかし2016年に国連の制裁がついに解かれました。
つまり、ここからが石油産業の本領発揮の時期なのです。
すでに自動車産業も拡大、人口ボーナス真っ只中、中所得国の罠までも遠いイランのこの状況は、
経済の成長トリガーを引いていると考えても良いでしょう。
イランの輸出入先・他国に依存性はあるのか?
貿易相手が例えば中国などに依存してしまっていると、
中国の経済減速が進めばそのぶん煽りを受け、イラン経済の低迷にも拍車がかかってしまいます。
まずは、輸出入産品をみてみましょう。
(1)輸出
原油,天然ガス,液化プロパン,その他石油・ガス製品
(2)輸入
精米,大豆油かす,飼料用トウモロコシ,小麦,乗用自動車
(引用:外務省)
当然のごとく原油・天然ガスなど資源関連が輸出を占めていますね。
輸入には精米、大豆油かすなど資源精製のための原料を輸入しています。
輸入にはさらに上記で解説した自動車産業に関する乗用自動車が含まれていますね。
では、肝心の貿易相手はどこになるのでしょう。
上記表は制裁開始時、制裁中、制裁解除後とありますが、
現在の輸出相手国は中国、インド、EUがメインになりますね。
中国がなんと28%を占めます。
輸入に関しても中国、UAE、EUとなりますが、こちらも中国が27%となりますね。
少し中国に依存している部分もありますが、
輸出入ともにインドやEU、トルコなどバランスよく分散しており、
中国の多少の経済減速が起きても経済への強い影響は悲観的になる必要はないかと思います。
この記事のまとめ
イランのファンダメンタルを解説してきましたが、
人口ボーナス中であり、理想的な人口ピラミッド、経済制裁が解かれたことによる石油産業の活発化で、
今後の経済成長が見込まれる株式投資を考えるには非常に魅力的な国と言えそうですね。
後続記事で、株式投資を行う上で、イランの為替に対する考え方とイラン株式市場も特集していきたいと思います。