フィリピン株式

過激発言が目立つドゥテルテ大統領が牽引するフィリピンの経済・政治・財政の総合ファンダメンタルズ分析。内需が底堅く推移している国への投資は良い選択か?

フィリピン」といえば暑くて海が綺麗な国です。

コロナ禍前にセブ島やボラカイ島に旅行に行った方も多いのではないでしょうか。

 

フィリピンは今後も経済成長が見込まれるため、株式市場は大きく注目されています。

そんなフィリピンにこれから株式投資を行っても大きなリターンを得られるのでしょうか。

 

今回はフィリピン株式投資を検討するにあたり、まず考えなければならないファンダメンタルズ分析をしていきたいと思います。

 

フィリピンの政治~ドゥテルテ大統領とは~

まずは政治から見ていきましょう。

フィリピンの政治を語る上で欠かせないのが悪評高いドゥテルテ大統領ですね。

良く言えばキャラクターが非常に濃い彼の言動は大変注目されています。

ドゥルテ大統領

 

例えばやや古いですが、以下の記事をご覧ください。

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は12月28日、南カマリネス州で演説し、「ヘリコプターから中国人を突き落としたことがある」と発言した。そして、再びするかもしれないという。

ロイター通信によると、ザ・パニッシャー(仕置き人)の異名を持つロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、かつてレイプ殺人容疑の中国人男性をヘリコプターから投げ飛ばしたことがあると発言した。

彼は「もし腐敗にまみれた人間がいたら、ヘリコプターに乗せ、マニラへ向かう途中で上空から捨てる」と述べた。

引用:HUFFPOST

 

なかなか過激な発言をしていますね。

 

この他にも、

「3人射殺した」

「麻薬中毒者は殺せ」

「国連を焼き払う」

オバマ大統領に対して「くそったれが」

ジャーナリストに対しても「くそったれ」

「俺はヒトラーの従兄弟だと言われている」

等の発言をしています。

誰がどう見ても過激派と言えるでしょう。

 

ドゥテルテ大統領の前のフィリピン大統領はアキノ大統領でした。

アキノ大統領

 

アキノ大統領は海外投資呼び込みを促進し、フィリピンの治安を改善するなど大きな功績を残しました。

人を見かけで判断してはいけませんが、見るからに穏やかそうですよね。

 

アキノ元大統領時代、ドゥテルテ現大統領は元大統領の右腕として活躍していました。

ドゥテルテはフィリピン国内で特に治安が悪化していたミンダナオ島のダバオ市の市長に就任し、大幅に治安を改善させました。

そして、その功績を買われ、2016年に大統領に就任したのです。

 

フィリピンの経済

続いてフィリピンの経済を見ていきます。

 

フィリピンの経常収支~財政赤字の原因は?~

まず経済と言えば重要なのが経常収支です。

以下は2007年から2019年までの経常収支の内訳とその推移です。

フィリピンの経常収支推移

参照:伊藤忠研究所

 

2015年までは黒字基調でしたが、2016年を境に赤字に転落してしまっています。

グラフを見ると、2016-19年の経常収支赤字の大きな理由が貿易赤字であることが分かります。

 

ではなぜフィリピンは貿易赤字基調なのでしょうか。

それは政府が推進するインフラ整備計画によって「資本財」の輸入が増加し続けているためです。

フィリピンのインフラはASEAN主要6か国の中で最も低い水準です。

今後の経済発展を支えるにはインフラ整備が必要不可欠であるため、ドゥテルテ大統領率いるフィリピン政府は、経済支援策の1つとしてインフラへのさらなる投資を優先事項に掲げているのです。

 

その結果財政赤字に陥っていますが、インフラ整備を止めては今後の経済発展の大きな足かせとなりますので、止めることはできない状況です。

 

しかし、このグラフにはありませんが、2020年は一転大きく経常収支黒字となっています。

これは新型コロナウイルスの影響で経済活動が停滞し、貿易赤字が縮小したためです。

参照:20年経常収支、130億ドルの黒字に転換

 

とはいえこれは一時的なもので、2021年以降経済が正常化するに伴って再びインフラ投資が再開し、経常赤字となることが見込まれます。

 

つまり、短期的には財政赤字が不安ですが、長期的にはインフラ整備が滞りなく進めば経済成長も着実に取り込めるでしょう。

 

フィリピンの経済成長率~今後も成長が続く?~

続いてフィリピンの経済成長率を見ていきましょう。

以下はフィリピンの経済成長率推移です。

フィリピンのGDP成長率

 

2000年以降フィリピンの経済は順調な成長を遂げていました。

その後2008年にリーマンショックの煽りを受け、成長率は6%台から1%に落ち込みましたが、その後すぐに回復を遂げました。

2020年は新型コロナウイルスの影響で-9.51%と過去最低の経済成長率となりましたが、2021年にはV字回復が見込まれています。

 

フィリピンといえば海外労働者(出稼ぎ)による送金が非常に多いのが特徴です。

国民の1割に当たる1,000万人程度が海外で労働しており、フィリピン国内への送金がなんとGDPの約1割を占めます。

自国送金額とGDPに占める割合

参照:JETRO

 

皆さんもコンビニやレストランチェーンなどに行くとフィリピン人の方々が働いているのを見かけることがあると思います。

この方々がフィリピンGDPの1割を賄っているのかと考えると感慨深くなりませんか?

 

また、フィリピンは国内のコールセンターサービスを拡大しています。

さらに、上記政治の章で述べた通り、治安改善により海外から信頼を得た結果、海外からの投資も増加しており、経済成長が加速しています。

 

フィリピンの人口は1億人を突破している一方、国土は日本の80%程度と人口密度が高いのが特徴です。

また、一人あたりGDPは現在3,000USDほどとなっています。

 

これは「中所得国の罠」である10,000USDまではまだまだ遠いため、労働集約型産業の成長に伴って経済成長は持続するでしょう。

 

「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することを指す。

(引用:内閣府

 

フィリピンの人口推移を考察~今後も人口は増加し続ける?~

経済動向を予測するに当たって、最も重要なのは「人口」です。

人口が増えなければ内需は拡大せず、消費活動や労働活動が活発化せず、経済は落ち込んでしまいます。

 

現在の日本がそうですよね。

以下の通り日本の人口は下落しており、経済停滞が続いています。

日本の人口推移

 

さて、本題のフィリピンの人口推移を見ていきましょう。

フィリピンの人口推移

 

一貫して毎年人口が増加していますね。

IMFの予測では2023年には1億2000万人に届くのではないかとなっています。

ではフィリピンの人口はは今後も本当に増加していくのでしょうか?

 

人口が増えるといわゆる「人口ボーナス」の恩恵を享受できますが、ぞれが継続していくのかどうかを確認しておく必要があります。

 

人口ボーナス

生産年齢人口(15〜64歳)に対する従属人口(14歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)の比率が低下し、経済成長を促すこと。人口ボーナス期では豊富な労働力を背景に個人消費が活発になる一方、高齢者が少なく社会保障費用が抑えられるため、経済が拡大しやすい。逆に従属人口の比率が相対的に上昇することを人口オーナスという。

(引用:野村証券

 

そのためには、その国の人口ピラミッドを確認する必要があります。

以下はフィリピンの人口ピラミッドです。

フィリピンの人口ピラミッド

 

フィリピンの人口ピラミッドは三角形となっており、まさに理想的です。

他新興国にも劣らない良い形をしており、しばらくは若年層が労働・消費を牽引し、経済成長の加速に貢献していくことが予測できますね。

 

フィリピンの言語はタガログ語ですが、ご存じの通り英語力も高い水準にあり外国企業が進出しやすい環境も整っています。

今後も海外企業の進出が進めばフィリピン経済のさらなる活性化が見込まれます。

 

しかし、中所得国の罠に差し掛かる一人当たりGDP10,000USDの水準になったところで真価が試されます。

フィリピンは国民の所得の低さが原因でまだまだ教育水準が低いため、労働集約型産業から技術集約型産業への産業シフトがうまくいくのかという点は要注意ですね。

 

フィリピンのGDP~どの産業がフィリピン経済を支えている?~

さて、フィリピンのGDPを支えているのはどの産業なのでしょうか?

GDPの構造を読み解くのは非常に重要です。

 

例えば経済が投資に依存していると、需要に対して過剰な供給が続いていずれバランスを崩してしまいます。

結果的に過剰債務となり、経済成長に歯止めをかけてしまう恐れがあるのです。

 

では、フィリピンはどうでしょうか。

フィリピンの実質GDP成長率

参照:ニッセイ研究所

 

フィリピンは投資は小さい一方民間消費は大きく、「投資先行型」ではなく「内需」の拡大を伴った経済成長を遂げていることがわかりますね。

次に、フィリピンの各産業のGDP構成比を見ていきましょう。

 

フィリピンのGDP産業別構成比

参照:JBIC

 

非常にバランスのよい産業構造ですね。

新興国は初め農林水産業が多くを占め、徐々にサービス業にシフトしていきます。

フィリピンはサービス業がすでに6割近くを占め、産業のシフトが進んでいることが読み取れます。

 

フィリピンは人件費が安く、製造業の工場などが多く建設されています。

しばらくはこの製造業の比率が上昇していくでしょう。

今後一人当たりGDPが10,000ドルに近づいたところで、金融業など知識集約型へと産業がシフトしていけるかが大きな山場となるでしょう。

 

フィリピンの輸出入相手国~特定の国に依存しているか?~

貿易相手国がどこかの国に依存してしまっていると、その国の経済が減速した際に煽りを受けてフィリピンの経済成長にもブレーキがかかってしまいます。

そのような恐れが無いかを確認しておく必要があります。

 

まずは、輸出入品を見てみましょう。

(1)輸出:電子・電気機器(半導体が大半を占める),輸送用機器等

(2)輸入:原料・中間財(化学製品等の半加工品が大部分),資本財(通信機器,電子機器等が大部分),燃料(原油等),消費財

(引用:外務省

 

原料を輸入してフィリピンで組み立て、機器を輸出している流れが読み取れますね。

これまでに確認した通り製造業が伸びていることがここでも分かります。

では肝心の主な貿易相手はどこでしょうか。

 

貿易相手国・地域(出典:フィリピン国家統計局)

(シェア順)
(1)輸出(2019年)米国(16.7%)、日本(15.1%)、中国(13.8%)
(2)輸入(2019年)中国(22.8%)、日本(7.6%)、韓国(7.6%)

(引用:外務省

 

輸出先は米国、日本、中国とバランス良くなっています。

特定の国に依存していないのはポジティブですね。

輸入は中国の比率がやや多く、日本、韓国と続きます。

もし仮に中国の経済が減速するとやや不安な構成ではあります。

とはいえ中国経済が減速するときは世界経済全体が減速するとき、つまり仕込み時とも言えますが。

 

まとめ

フィリピンのファンダメンタルズ分析を実施してきました。

次回以降フィリピンの為替動向や株式市場について具体的に解説していきたいと思います。

 

この記事のまとめは以下の通りです。

  • ドゥテルテ大統領はフィリピン国内で特に治安が悪化していた地域の治安を改善させたことが評価され2016年に大統領に就任したが、発言が過激で不安視されている。
  • フィリピンのインフラはASEAN主要6カ国の中で最も低い水準であり早急なインフラ整備が必要不可欠となっているため、インフラ投資が盛んで財政赤字傾向となっている。
  • フィリピンの経済成長率は新型コロナウイルスの影響で一時的に落ち込んだが2021年は回復が見込まれる。
  • 出稼ぎ労働者の海外送金や国内コールセンターの拡充、国内治安改善による海外企業呼び込みが功を制しており、経済成長が進んでいる。
  • 一人あたりGDPは3,000USDほどとなっており「中所得国の罠」まではまだまだ遠く、労働集約型産業が経済成長をけん引する。
  • 一貫して毎年人口が増加しておりIMFの予測では2023年には1億2000万人に届く水準となっている。
  • 人口ピラミッドも理想的であり、さらなる人口増加及び経済成長が見込まれる。
  • 人件費の安さから製造業が他国からシフトしてきており、しばらくはこの製造業の比率が上昇する。
  • フィリピンの輸入相手国は安定しているが、輸出はやや中国に偏っている。

と言ったところです。

日々の情報収集は怠らないようにしましょう。

 

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