今回からインドネシアについて分析していきたいと思います。
インドネシアといえば、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
私は石油、島、バリというイメージです。
恐らくバリというイメージが強い方が多いと思います。
今回はインドネシア株式への投資を行う前にまずインドネシアの経済状況と財政状況についてまとめていきたいと思います。
Contents
インドネシア経済の現状
インドネシアの現在の経済状況について見ていきましょう。
まずは以下の各国の経済成長率の比較をご覧ください
インドネシアはリーマンショックの影響もあまり受けずに安定した成長率を維持しています。
危機耐性が強いことが見て取れますね、強固な経済構造を構築していることが分かります。
では経済水準はどの水準なのかという点を1人あたりGDPを比べてみました。
中国よりは低いですが、インドやアセアンの現在成長が著しいベトナムやフィリピンよりは高い水準であることが分かります。
成長が止まる又は鈍化する水準である中所得国の罠と呼ばれる1人あたりGDP10,000USDまではまだ距離があります。
その為、暫くは経済成長が減速することはないことが見込まれます。
STOP 現在のインドネシアの経済水準を他のアジア諸国と表で比較
まだあまりイメージ湧かないという方もいらっしゃると思います。
以下はみずほ銀行がまとめた資料ですが、インドネシアの位置づけが分かり易いかと思います。
1人あたりGDPで見ると
シンガポール>オーストラリア>香港>日本>韓国>台湾>マレーシア>中国
ということですね。
今後のインドネシアのGDP成長の可能性を人口構造から考察
現在の経済水準について見てきたところで今後の経済成長の可能性を考察していきましょう。
新興国の一番分かり易い経済成長のドライバーは人口の増加です。
綺麗に末広がりの形をしていますね。
今後労働人口(15歳~60歳)が増加する形で総人口が上昇していく形をしています。
以下もご覧頂きたいでのですが、既に人口は2億7900万人と東南アジアで最大、世界第四位です。
今後更に上昇し2050年代には3.3億人に達する見込みです。
人口構造面からは成長が減速する兆しは見受けられませんね。
インドネシアの経済構造を産業面から分析する
次に産業面で脆弱性がないかを見ていきましょう。
記憶に新しい原油価格の下落時に経済が崩壊し、通貨が売り込まれインフレが発生したロシアのような事態になりますからね。
それではインドネシアの産業構造について見ていきましょう
インドネシアは1960年~1990年のスハルトによる独裁体制期から製造業の比率が高まり資源の割合が減少していきました。
民主化以降はサービス業の割合が高まったことにより製造業と鉱業の割合が低下しています。
全体的に鉱業の割合は低下し高付加価値のサービス業にシフトしてきていることから安定感のある経済構造となっています。
インドネシアの経済構造を需要面から分析する
インドネシアの成長を需要面から分析していきましょう。
経済学部の方は思いだされる方もいらっしゃると思いますが国の需要面から分解すると、
GDP = 個人消費 + 政府支出 + 民間と政府の投資(=固定資本) + 純輸出 (輸出 - 輸入)
で表されます。
個人消費:名前は難しいですが、国民がどれだけモノやサービスを消費をしたか
政府支出:政府がどれだけお金を使ったか
固定資本:民間と政府がどれだけ投資を行ったか
純輸出:貿易でどれだけお金を稼いできたかです
以下GDP成長率にどの項目が貢献したかを表した表ですが、個人消費が中心の健全な成長ですが固定資本が若干高いのが気になります。
固定資本が積みあがった結果としてGDP全体に占める割合は東南アジアの中で最も高く35%となっています。
インドネシアにおいては資源開発の投資によって、ここまで投資の割合が高くなっていますが、
今後はインフラ開発需要が伸びる見込みで暫くは投資需要がありますが、その後の経済成長失速が懸念されます。
インドネシアの政治は安定的なのか?
経済が今後の成長可能性が高いことが明らかになっても、新興国は政治システムが不安定であったら株・通貨・債券ともに売り込まれます。
良い例がブラジルや南アフリカですね。
ブラジルは国の状態としては経済成長が見込める形であるにも関わらず政治の汚職問題が原因で、この5年間経済が低迷しています。
インドネシアは32年間にもわたるスハルト大統領の政権が崩壊した後、4人の大統領が短期で入れ替わり政治情勢は混迷していました。
しかし、2004年に初の国民選挙で選出されたユドヨノ大統領のもとで10年間にわたる安定政権が樹立し政治情勢は安定化にむかいました。
ユドヨノ大統領の後2014年にジョコ・ウィドド前ジャカルタ知事が大統領として選出され、民主的な政治体制が確立されました。
ユドヨノ大統領政権時から経済成長が安定しており、政治的には新興国の中では安定している分類ということが出来るでしょう。
インドネシアの財政を分析する
インドネシアの経済については投資比率が高い点を除いては今後の経済成長可能性が高く、政治体制も安定していることを確認してきました。
最後に財政状況を見ていきましょう。
政府の債務を見る場合、重要なのは絶対的な金額ではなくGDPに対してどれだけの債務を抱えているかということです。
わかりやすく言えば、年収1,000万円の人が100万円の借金をしてても大したことはありませんが、1億円の借金をしていたら大変なことですよね。
インドネシアの政府債務の対GDP比は以下の通り、東南アジア諸国の中で最も低い水準となっています。
毎年債務は増えているのですが、債務の増加の伸びをGDPの伸びが上回っていることが要因です。
とはいっても他の新興国と比べると依然として低い水準となっています。
一方歳入に関しては問題点があり、政府に入ってくる歳入は以下のように対GDP比でインドを下回り最低水準となっています。
歳入が少ないのに財政が安定しているということは、政府が緊縮財政をしていることを意味しています。
緊縮財政を敷いていれば更なる投資を実行することが出来ずGDPの下押し圧力がかかります。
またインフラ整備に回す資金がなければ、経済の非効率性がたかまって国内経済に悪影響をもたらします。
歳入の強化はインドネシア財政の大きな課題となっています。
まとめ
東南アジアで最大の人口を抱えるインドネシアは経済水準としては一早く発展しているマレーシアには及びませんが、
フィリピンやベトナムなどに比べると高い経済水準となっています。
今後は更なる人口増加によって成長の維持が期待されるが、投資比率が中国同様に高いことは懸念されます。
また以前に比べると低くなってきた資源産業への依存度の高さも懸念点としてあげられ、
政治体制は安定化しており大きな問題点はありませんが、
GDPに対して得られている歳入が少なく今後の投資が減少して、インフラ整備が遅れ経済の下押し要因となる恐れがあります。
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